親の墓をどうする?永代供養と墓じまいの選び方とトラブル防止の注意点まとめ

お墓

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

「お墓をどうするか」という選択は、遺された家族にとって大きな決断です。少子化や高齢化により、従来の墓守制度が成り立たなくなりつつある今、「永代供養」と「墓じまい」が注目されています。この記事では、それぞれの違いや手続き、費用の目安、選ぶ際の注意点までを具体的に解説します。将来に悩まないための正しい判断材料を手に入れましょう。

永代供養と墓じまいとは

現代社会では家族構成の変化により、従来の「代々お墓を受け継ぐ」という文化が揺らいでいます。その背景には、少子化や都市部への人口集中、高齢者単身世帯の増加といった社会的要因があり、お墓の管理や継承に不安を抱える人が増えています。こうした中、注目されているのが「永代供養」と「墓じまい」です。

永代供養は、家族に代わって寺院や霊園が永続的または一定期間供養してくれる仕組みで、継承者がいない場合でも安心できる選択肢です。一方、墓じまいは、現在の墓石を撤去して遺骨を他の場所へ移す行為であり、供養スタイルの変更や墓地の整理を目的としています。これらはいずれも、現代の供養スタイルの多様化に応じた合理的な解決策といえるでしょう。


永代供養と墓じまいの違いと共通点

永代供養と墓じまいは、どちらも「お墓の将来に対する不安」を解消する方法ですが、それぞれ異なる特徴を持ちます。共通するのは、「墓守の不在」「経済的負担の軽減」「無縁仏化の回避」といった動機です。これに対して、手続きの有無や遺骨の扱い方、必要な費用には明確な違いがあります。以下に要点をまとめた表をご覧ください。

項目永代供養墓じまい
管理主体寺院・霊園などが供養と管理を実施墓地管理者と遺族
手続き契約のみで完了することが多い改葬許可申請が必須
費用構造一括払いや年払、内容により変動墓石撤去費、運搬費、納骨費用が必要
精神的負担故人を継続的に弔える安心感墓の撤去による感情的負担が発生することも
宗教的な条件寺院によって宗派制限がある場合がある改葬先を自由に選べる場合が多い

このように両者には明確な役割の違いがあり、自身の事情や希望に応じて選ぶことが重要です。


墓じまいの具体的な流れ

墓じまいを実施する際は、事前準備と手続きが不可欠です。まず、親族間で意見を共有し合意を形成することが重要です。その後、改葬を希望する場合は「改葬許可申請書」を市区町村役場に提出します。必要書類には、現墓地の管理者による証明書と、新たな納骨先からの受け入れ証明書があります。申請が受理され許可が下りると、石材業者と契約し、墓石の撤去や遺骨の取り出しを行います。

改葬後の遺骨の行き先は、永代供養墓、納骨堂、自宅保管などから選べます。また、多くの場合、再納骨の前に「魂抜き」や「閉眼供養」を行うことが推奨されます。以下に、墓じまいの工程を整理した表を記載します。

ステップ内容
1. 親族との合意墓じまいの目的と必要性を説明し理解を得る
2. 書類の準備改葬許可申請書・受入証明書を準備
3. 行政手続き役所に改葬許可を申請し許可証を取得
4. 墓石の撤去と遺骨収骨石材店と契約し、物理的な作業を実施
5. 新しい供養先へ移送永代供養墓や納骨堂などへ再納骨

永代供養の選び方と注意点

永代供養を選ぶ際は、供養の形式や契約条件をよく理解しておくことが大切です。形式には、「合同墓(合祀墓)」「個別型永代供養墓」「納骨堂」「樹木葬」などがあり、費用や供養の方法が異なります。たとえば合同墓は費用が抑えられる一方、個別に供養されることは少ないため、家族が寂しさを感じることもあります。

また、契約内容には注意が必要です。契約期間が明示されている場合、その期間終了後に他者と合祀されることもあり、事前確認を怠ると希望と異なる供養方法になるリスクがあります。宗派による制限や、法要の有無、管理者の存続性なども契約前に確認しておくべきポイントです。信頼できる寺院・霊園を選び、見学や説明会への参加を通じて納得のいく選択をしましょう。


費用の目安と助成制度

永代供養と墓じまいは、それぞれにかかる費用が異なります。以下の表に、代表的な費用の目安をまとめました。

費用項目金額の目安
永代供養(合同墓)約5万〜20万円
永代供養(個別墓)約30万〜70万円
墓石撤去費用約10万〜50万円
改葬許可手続き数千円(役所手数料)
石材店への手数料工事内容により変動

また、一部自治体では「墓じまい支援助成制度」を設けており、費用の一部を補助しているケースもあります。高齢者支援の一環として活用できる場合もあるため、自治体の窓口で確認するとよいでしょう。


トラブルを避けるための注意点

墓じまいや永代供養を行うにあたり、注意すべき点は複数あります。最も多いのは、親族間での意見の食い違いです。特に年長者が「ご先祖を粗末に扱う」と感情的に反発するケースも見られます。このような問題は、丁寧な説明と時間をかけた話し合いで解決を図ることが重要です。

また、契約に関するトラブルも多く報告されています。口頭での説明と実際の契約内容に齟齬がある、というケースでは、希望通りの供養が行われず後悔することにもつながります。信頼できる管理者を選ぶことはもちろん、契約内容を文書で確認し、第三者(行政書士や司法書士)に相談するのも一つの方法です。安易に価格だけで判断せず、「供養の本質」を大切にする視点を持つことが求められます。


新たな供養の選択肢

現代では供養のスタイルが多様化しています。従来の「墓地に納骨して供養する」方式に加え、「自宅供養」「散骨」「宇宙葬」などが登場しています。特に都市部では、「仏壇のある生活」が難しい住宅環境も多く、ミニ骨壺やペンダント型の遺骨保管器など、手元供養の人気が高まっています。

さらに、オンラインでの法要や、仮想空間での追悼イベントといった、デジタル供養も普及しつつあります。こうした新しい方法は、宗教観にとらわれず、個人の生き方や価値観を反映させやすいという特徴があります。供養のかたちは、社会の変化とともに変わりつつあるのです。


まとめ

永代供養と墓じまいは、今後ますます一般的な選択肢として広がっていくと考えられます。重要なのは、「情報不足」による後悔を避けることです。親族間での丁寧な話し合い、信頼できる管理者の選定、十分な情報収集を怠らずに進めましょう。そして、供養とは形式ではなく「想い」の表現であるという原点に立ち返り、自身と家族にとって最も納得のいく形を選ぶことが何よりも大切です。

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