老健と特養の費用はどっちが安い?サービス・入居条件までわかりやすく簡単比較

介護

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

高齢者の介護施設選びで多くの方が悩むのが、「老健と特養のどちらが費用的に安いのか?」という点です。どちらの施設にも異なる役割と料金体系があり、表面上の金額だけでは判断できない複雑さがあります。本記事では、費用やサービス、入居条件を比較しながら、家族と本人にとって納得のいく選択ができるよう、実情に即した解説を行います。

特養と老健の違いとは?

高齢者向けの介護施設としてよく比較されるのが、特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)です。どちらも要介護状態の高齢者が生活する場として認知されていますが、その役割と利用目的には大きな違いがあります。特養は、日常生活に常時介護が必要な高齢者の生活の場として設けられ、主に社会福祉法人や地方自治体が運営しています。医療機関と連携しつつも、生活支援が中心です。

一方で、老健は医療法人などが運営しており、医師やリハビリスタッフが常駐して、在宅復帰を目指すためのリハビリを提供する施設です。つまり、老健は「一時的な滞在」を前提とし、退院後の受け皿や在宅介護へ戻るまでの中間地点といった立ち位置になります。

入居の長期性、運営主体、医療体制などが異なるため、施設選びの際にはその目的と役割をきちんと理解することが欠かせません。また、近年では高齢者の多様なニーズに応じたケアが求められており、各施設の個性やサービス内容にも注目する必要があります。


老健と特養の費用を比較

施設選びで大きな判断材料となるのが費用です。特養と老健では、基本的に初期費用は不要ですが、毎月かかる利用料には一定の差があります。月額費用は特養で約7万〜15万円、老健では8万〜16万円が目安となっています。

これは老健が医療的ケアやリハビリを重視した体制を整えているため、人件費や設備費が反映されるからです。とはいえ、実際の負担額は所得や介護度により変動します。国の制度として、「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けることで、低所得者には食費や居住費の軽減措置が適用されます。

以下に両施設の費用を表でまとめます。

費用区分特養老健
初期費用原則不要原則不要
月額利用料約7万〜15万円約8万〜16万円
医療体制看護師常駐、医師は往診医師・看護師常駐
補助制度所得に応じた減額あり所得に応じた減額あり

また、特養では基本的に医療行為が必要な場合は外部医療機関との連携になるため、外来通院や往診時の交通費などが別途発生することもあります。老健はその場で診療が受けられる分、外部医療機関への通院が少なくなる傾向があり、トータルで見ると出費が大きく変わる可能性もあります。


入居条件と待機状況の違い

施設を検討するうえで、入居のしやすさは非常に重要なポイントです。特養では原則として要介護3以上の認定が必要とされており、申込者が多いため待機期間が長期化する傾向があります。都市部の人気施設では、待機者が数百人に上ることも珍しくありません。

一方、老健では要介護1以上で入所可能とされており、かつ短期滞在が前提であるため、回転率が高く比較的早く入居できる傾向があります。急な退院や在宅介護が一時的に困難になった場合の受け皿として、老健は即時対応が期待できる存在でもあります。

老健と特養の入居条件と待機状況を表にまとめました。

比較項目特養老健
要介護度要介護3以上要介護1以上
利用期間長期原則3〜6ヶ月
入居しやすさ待機期間が長め比較的スムーズに入居可能

ただし、老健は期限付きの利用が基本であるため、長期的な生活の場としては適しません。特養へのスムーズな移行のためにも、老健の利用中にケアマネジャーと連携をとることが求められます。


サービス内容とケアの手厚さ

特養と老健では、提供されるサービスの中身にも明確な違いがあります。特養では、入居者の生活支援が中心であり、食事・入浴・排泄などの基本的な介護に加えて、日常生活をより快適にするためのレクリエーション活動などが行われます。医師は常駐しておらず、看護師による健康管理が基本です。

これに対して老健では、医師が常駐しているため、医療的な対応が日常的に行える点が大きな特長です。特に、リハビリに力を入れており、理学療法士や作業療法士が在籍して、個別にプログラムを設計し対応します。在宅復帰を前提とするため、身体機能の維持・回復が最優先されるのです。

どちらを選ぶかは、本人の健康状態や家族の介護方針によって大きく異なります。医療ケアやリハビリが重視される場合には老健、穏やかな生活環境で長期的に過ごしたい場合には特養が適しています。


老健と特養どちらを選ぶべき?

施設の選択においては、費用面やサービス内容だけでなく、利用者本人や家族の状況に応じた判断が必要です。以下のような状況での選択例を参考にしてみましょう。

状況推奨施設理由
退院後でリハビリが必要老健医師・リハビリ専門職が常駐
要介護度が高く長期入所希望特養終の棲家としての利用が可能
施設にすぐ入りたい老健入所までの待機期間が短い

また、特養に入りたいが空きがない場合、一時的に老健に入所しながら待つという選択も現実的です。老健で在宅復帰に向けた支援を受ける間に、特養の空き状況を確認し続けるといった流れも、多くの家庭で採用されています。


費用・条件を踏まえた比較一覧

施設を比較する際には、以下のように表で全体像を把握することで、選択の判断材料が明確になります。

項目特養老健
入居目的長期的な生活の場在宅復帰を目的とした短期滞在
要介護度要介護3以上要介護1以上
月額費用約7万〜15万円約8万〜16万円
初期費用原則不要原則不要
医療体制看護師常駐、医師は非常勤医師・看護師が常駐
サービス生活支援、レクリエーションリハビリ、医療支援重視
入居しやすさ長期待機が必要な場合あり比較的早く入居可能

まとめ

介護施設選びは、本人の健康状態や家族の介護力、費用面など複数の要素が絡む重要な選択です。特養と老健は目的もサービス内容も異なるため、単純な費用比較ではなく、総合的に判断する必要があります。待機期間や医療体制、リハビリの有無など、細かい違いが将来的な満足度に直結します。

最終的には、本人の「どのように過ごしたいか」という意向を尊重しつつ、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することが望ましいです。介護施設の選択に正解はありませんが、後悔しないためには情報収集と現地見学、そして冷静な比較検討が不可欠です。

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